赤星マサノリ×坂口修一二人芝居

赤星と坂口と三重とのつながりについて

赤星:僕は三重に居たんです。19歳の時に志摩スペイン村1)三重県志摩市にある複合型リゾート施設。1994年にオープン。
志摩スペイン村
がオープンしたんです。僕は、スペイン村1期でダンサーで入ってた。

坂口:へえええ

赤星:1年居て、本当は立ち上げの10ヶ月で帰らせてもらう予定だったんです。でも、ショーが1年あるから居てもらわないと困るって言われて、1年居たんです。

―じゃあ、阿児町(現:志摩市阿児町)に暮らしていたんですね。

赤星:でもね、働く時間がめっちゃ短いんですよ、10時から30分だけショーして、1時くらいからパレード出たら、もう終わりで(笑)

坂口:めっちゃええやん

赤星:3時くらいから海行けるねん(笑)

―坂口さんは、2011年の南河内万歳一座「七人の部長」2)2011年に南河内万歳一座・内藤裕敬プロデュースとして上演。8月に三重県文化会館小ホールでも上演された。高校演劇で有名な戯曲を関西小劇場の俳優達がしかも女子高生となり上演するのは話題になった。坂口さんももちろん女子高生をしっかりと演じた。で三重県文化会館の舞台に出演してますが、三重、どうですか?

坂口:いや、まだそんなどうですかと言えるほど、全然(笑)。とにかく大阪から三重に来る電車が楽しい。

赤星:楽しいなあ

坂口:今日も、交通費をケチって鈍行で来たので、途中、温泉口?

赤星:榊原温泉口3)三重県津市白山町にある近鉄大阪線の駅。駅に停車または通過する際に、下り方向に見える景色が話題になる。

―黄金観音4)榊原温泉口駅から見える黄金の観音。正式名は純金開運寶珠大観世音菩薩。高さが33メートルある。
宝珠山大観音寺
があって

赤星:あの、ミロのヴィーナスとピラミッドとサモトラケのニケ5)榊原温泉口駅から見える彫刻の一つ。日本に居ながら「パリのルーブル美術館”の本物の雰囲気を多くの人々に味わって欲しい」という思いで建てられた。なぜか自由の女神像などもある。
ルーブル彫刻美術館

坂口:あれは何なんだ、駅が温泉の名前で。

―榊原温泉は良いんですよ、日本三名泉6)榊原温泉は、清少納言「枕草子」に詠われた日本三名泉の一つ。肌がつるつるスベスベになる事から美肌の湯として知られてい肌がつるつるスベスベになる事から美肌の湯として知られている。
榊原温泉
のはず

赤星坂口:ええーっ!

―温泉に入れば分かりますけど、ぬるぬるしていいですよ。

赤星:そうなんや、ちょっとバカにしてた。「もうすぐポリシーのない温泉が見えて来るよ」って(笑)。

坂口:あれはどういうコンセプトなんですかねえ、

―私たちが小さい頃からあります。津市の中心部から車で30分くらいで着きますよ。

坂口:今、(大阪から)やってくるのに一番インパクトがあるのは、榊原温泉口駅(笑)。

赤×坂二人芝居が始まるきっかけ

―この二人芝居シリーズは2010年からスタートなんですか?

坂口:2010年の12月に大阪でスタートした奴を、2011年にツアーで回ったので、僕ら2年目という感じで。

―お二人はお互い面識はあった?共演してたとか?

赤星:最初に(共演)してるのが、2003年にオリジナルテンポ7)劇作家・演出家のウォ―リ―木下と赤星マサノリ がプロデュ―スする演劇ユニット。パフォ―マンス集団としてのオリジナルテンポには坂口さんが入っている。
オリジナルテンポ
に出てもらって二人芝居みたいなのをしたんですよ。

坂口:僕と赤星2人が、(舞台設定が)家具屋さんに居てるんですけど、2人で時間つぶしにゲームをしていて、そこに銀行強盗だったり、インチキセールスの人だったり僕の元カノだったり、いろんな人が来て、てんやわんやになるという、ちょうど扇町8)大阪市北区にあった小劇場・扇町ミュ―ジアムスクエア(OMS)のこと。大阪ガスの遊休不動産の活用を目的にした事業として1985年にオ―プン。関西小劇場界の中心劇場として多くの劇団のホ―ムグラウンドとなった。2003年3月に閉館。が閉館になる直前ですね。それが変わった作り方で、台本なしでエチュードで作って地ならししてゆくというか、その時、割とがっつり2人とも、ゲームしてどうでもいい話をエチュードで散々やって

赤星:今考えるともったいないことに、その頃全く友達になれなかったんです。

坂口:いや、僕は割と友達になったと思ってたんです(笑)、この話題が出る度に言うんですけど(笑)、僕は結構仲良くなった印象があるんだけど

赤星:なんかね、あんまり友達じゃなかった(笑)

坂口:この企画、この後もね2度3度やってるんですけど、いまいち情宣に来ても「それから4~5年は会ってないです」とか「いやいやいやいや、やってるやってる」って心の中で思ってたんですけど(笑)。

赤星:ほんま、やってるわ

坂口:やってるし、もともとウォーリー木下と赤星の二人で始めたのがオリジナルテンポっていう企画なんですよ。最初は一人芝居?

赤星:そう最初は僕の一人芝居。

坂口:次に、僕が混ざって、エチュードで作って、これが面白かったので、その間の転換に黄色いレインコートの集団が楽器を演奏したりパフォーマンスをするという、それをウォーリー木下が気に入って、また別にオリジナルテンポというパフォーマンス集団を作って、僕はそこに所属しているっていう経緯があって。また2回目(共演)も、がっつりやって、「なんやったら俺もオリジナルテンポのメンバーちゃうかな」っていう、さらにその後、「ゴドーを待ちながら」をやったんです。

赤星:そこに僕参加していない(笑)なんか(別の)本番かぶってた。

坂口:だからね、結構がっつり

赤星:がっつりやってるんですけどあんまり友達じゃなかった(笑)。でも、その後しばらくして、一人芝居するようになってお互い、あの別々で、坂口さんは1年間9)坂口さんは、2007年4月から1年間「火曜日のシュウイチ」というタイトルで、毎週火曜日にひとりで2ステ―ジずつ立ち、100ステ―ジを上演した。
「火曜日のシュウイチ」
赤星さんは、2007年2月から5ヶ月間、毎月関西小劇場界の作家達の作品を一人芝居で上演する「GLOBAL MAP」を上演した。
やって、僕は5ヶ月やって、その時期がドンピシャやったんですよ。

坂口:まるかぶりやったんやな

赤星:全然相談もなく。で、(一人芝居を)やって終わって、また別のユニットのお芝居にたまたま二人が客演で出演してて。その時にだんだんなんかこうしゃべるようになって、「あ、この人が居たら安心やな」と思えるようになってから、仲良くなりました。

―坂口さんと認識がかなり違いますが(笑)

坂口:その前から結構しゃべってるって(笑)。確かにその時期かなしゃべるようになったのは。本当、道で自転車漕いでたらばったり会って、

赤星:「おう!」

坂口:「おう!」

赤星:「俺、今度一人芝居するねん」

坂口:「俺もするわ」

赤星:「俺の方が先やで、2月からや」

坂口:「俺、4月からや」

赤星:「5ヶ月連続」

坂口:「うわあ、俺、1年間」
最初は打ち消しあうかと思ったんですけど、同時期に同年代の役者が一人芝居するって新聞とか取り上げてもらって、すごい相乗効果で。で、一人芝居って特殊なんでね、相手役も居ないし、自分がどうするかって結構きついものがあったんですけど、お互いに。呑みに行って「大変やね、お互い」。

赤星:一人芝居が先に終わるじゃないですか、5ヶ月なんで、終わった後に「結局、一人芝居やって何が残るのかな」ってずっと考えていたんですよ。で、坂口さんが終わる前に「一人芝居終わった後にどう思うか聞かせて」っていう所くらいから、「あ、今度、二人芝居しよか」みたいな話になって。

―じゃ、2010年の最初の二人芝居は、すぐ?

赤星:結構ねすぐは動き出したんです。

坂口:企画書を持って行ったりしたんですけど、お互い、スケジュールが結構忙しくなって、たまたま違う芝居で(お互い出演していた)、袖でスタンバイしている時に「二人芝居やる?」

赤星:「やろかぁ」っていって、スタンバイしに行くみたいな(笑)。

坂口:本番が何ステージかあったんで、袖で会う度に「どこでやる?」

赤星:「インディペンデントシアター10)in→dependent theatre。大阪日本橋にある劇場。1st・2ndと規模の違う2つの劇場がある。毎年11月に開催される最強の一人芝居フェスティバル「INDEPENDENT」は有名。
2011年にジャパンツア―三重選考会を津あけぼの座で、ジャパンツア―in三重を三重県文化会館小ホ―ルで開催した事から、2012年より地域版INDEPENDENTとして、「INDEPENDENT:TSU」を開催した。
2012年の「INDEPENDENT:12」は11月22日(木)~25日(日)にin→dependent theatre 2ndで行われる。
in→dependent theatre
2012年のINDEPENDENT:TSUア―カイブ
とかいいなあ」といってまたスタンバイ(笑)

坂口:袖中でのみ、企画が進み、拡げてゆく(笑)。最終的にプロデューサーの笠原さん11)株式会社righteye(ライトアイ)の代表である笠原希さん。赤星マサノリ・坂口修一二人芝居のプロデュ―サ―を続けている。が入った事で1年目のスタートなんて「目指せ!全国ツアー」で「目指せ」ですからね、大阪公演しか

赤星:決まってなかったもんね

坂口:決まってなかったのに、東京決まって、東京公演やってる時に

赤星:札幌

坂口:札幌決まり、札幌やってる間に福岡決まり、じゃあ最後に大阪戻ってやろうか

赤星:凱旋公演

―二人芝居って、二人しか出演しない分、たとえば飽きたりしないんですか?

坂口:僕は全然飽きるとかなかったですねえ、あの確かに二人芝居で、1年間、微妙に3ヶ月ごとにするのはどうかなあとは思ったんですけど、やっていて面白かったですねえ。変化してゆくのが、相手役が赤星で良かったなあっていう感じでしたけど、どうでした?あれ?飽きた(笑)

赤星:アハハハ

坂口:いや、むしろ「飽きた」って言った方が面白いかなって思ったんですけど

赤星:僕もやっぱりもともと出し方は違うんですけど、考えていることが、言うことは違うんですけども、結構言ってることは一緒やったりとか、同じ年やったりとか、なんかねえ居てもそんなに苦じゃないというか、なんでもしゃべれるし、お芝居していても常にこう変わって行けているし、飽きることはなかった。不思議なんですけど、飽きない。「貧乏ネ申」をつくる人々

―演出家の方はどんな感じなんですか?

坂口:演出は化石オートバイの山浦さん12)劇作家・演出家・俳優であり、劇団化石オ―トバイの主宰・山浦徹さん。前作に続き、赤星マサノリ・坂口修一二人芝居の演出を担当する。
化石オ―トバイ
、僕らより少し年上の方です。前回もお願いしています。二人芝居をするのに、台本は見て面白いと思った方に、演出も僕らよりちょっと上の世代でお願いしたいなあ、で、二人で「誰に頼もう?」って時に彼に。この企画自体が「僕らで作りたい」というか、ツアーとか回らせてもらうことはあるんですけど、俳優でそれも客演という形で回ることが多いので、もっと密に地元の人としゃべって、「こんな人がこういう芝居します」というところまで。客演の俳優だとこういうのって、作・演出の方が喋ってしまってというのあるじゃないですか?(稽古は)演出も僕らのやることを見ながら「まずお前らどういうことしたいねん」って所から。間違えてたりすると「こっちの方が良いんじゃないか」と。

赤星:自由にやらせてくれてなおかつこう修正してくれるのがありがたい

坂口:僕らの力量を踏まえて、絶妙のさじ加減で転がしてくれている
なって思いますね

―今回は角ひろみさん13)角ひろみさん。1995年「芝居屋坂道ストア」を旗揚げ。『あくびと風の威力』で第4回劇作家協会新人戯曲賞佳作を受賞。劇団解散後、岡山市に拠点を移す。2008年に『螢の光』で第4回近松門左衛門賞を受賞。劇作家としての活躍が続いている。
角ひろみブログ
が脚本です。角さんの脚本はどうですか?

坂口:もうね、台本はね、最高にいいですよ

赤星:本当、僕らにこう書いているというか、

―当て書き?

坂口:当て書きではないらしい

赤星:でもね雰囲気がね、二人のために書いているっていう。

一年目は既成のね

坂口:今回に関しては、僕らもどういう本が上がってくるか、で、僕らに向けて書いてもらっている、面白いです。僕はこれまでに角さんに書いてもらった一人芝居を二本やっていまして、その時もそうだったんですけど、事前にアンケートというか「どんなのをしたいか?」という話があるんですけど、書き上がってきて全然気付いてなかったんですけど、終わった後、「あの時の話をクリアしてるのよ」と言われて、「あ!そういえばそうだ」「あの話はこれ、この話はこれ」っていう感じで。今回、僕ら岡山に(角さんと)打ち合わせに行って、「何が好きか?」とか聞かれて、僕は前に答えてたんですけど、

赤星:僕が「これが好きで」とか答えて、その辺知らずにこの芝居の稽古してたんですよ。で、昨日たまたま角さんが稽古場に来ていて、「いや、これホッシーが言うから、これ入れたんやで」とか言われて「うわあ、そうや言ってたわ、これ」

坂口:ちゃんとリサーチをして書く

赤星坂口:おお、すごいなあ

赤星:それも本当細かい所の指定からちゃんと合っているんですよ。角さんもうめちゃくちゃ考えていてくれて、書いてくれている感じですね。

坂口:細かな台本の修正、また山浦さんと角さんというのが二人とも仲が良いので、台本の修正ややりとりもすごいストレスがない。こんなに細かく、句読点取るとか、頭を少し削るとか、僕らのことを岡山でも考えてくれているんだっていう

赤星:うんうん。それもあって一言一句見逃せない感じにはなってますけども、本当に。

坂口:昨年全国ツアー回ったことをふまえて、やっぱ、既成でやるか、新作でやるかっていう話をして。予想以上に「大阪の芝居」って感じで見に来てくれるんですよ。逆に言うと、珍しいというか決まった劇団以外で、大阪の人が(上演に)やって来る、やっぱり大阪にゆかりのある台本を持って行った方が良いよね。で、角さんはほぼ大阪は分かるので選んで、お願いしたんですけども。

―回を追うごとにお二人の世界が広がりつつある作品になっている?

坂口:去年行ったところと、大阪と札幌は去年も上演して、2回目なんですけど、一週目の奴もすごい喜んで頂いて。劇団とか、僕も劇団所属してますし、かつて劇団をやっていたんですけど、難しいのはイメージを作るべきなのか作らないべきなのか、例えば、「コメディ、この劇団を見に来たら笑える」みたいな。それとは別に役者って新しいことがしたいというか、幅を拡げたいとかいろいろわがままなニーズがあったりする中で、 僕ら役者で作るものやから、そこらへんを両方満たすようなラインでっていう感じでお願いしたら、まあちょうどこれは前回見て面白かった人にも、もちろん前回僕らがやったものと似てる分というか、期待を裏切らない分と新しい「こんなことも出来るんだ」とか、それはお芝居全体含めてですけど、両方狙える作品になりそうな舞台ですね。逆にその辺僕らに掛かっているところが多いので(笑)

赤星:(笑)

―最後にメッセージをお願いします。

赤星:僕は第二のふるさとと言われる(笑)三重で、19歳・20歳と青春を過ごしたこの地でお芝居をするので、良かったら見て頂けたらありがたいなと思っています。

坂口:僕達、大阪を代表する俳優2人なので、演出含めて、台本含めて、これ以上望めない布陣で満を持してやってきますので、これで大阪の芝居のレベルをはかってもらうためにもね、是非見に来て頂きたいと思います。

写真撮影:松原豊(office369番地)
構成:油田晃(特定非営利活動法人パフォーミングアーツネットワークみえ)
収録:2012年8月23日・津あけぼの座